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Topic: ビットコインの価値 (二) (Read 61 times)

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August 01, 2022, 06:54:30 AM
#1
 2.信用貨幣
 貨幣は商品取引の発展に伴い生成した特殊な商品である。貨幣は価値貨幣と信用貨幣がある。価値貨幣とは自身の物質価値に基づいて、商品交換の媒介物になる貨幣である。主に自然実物貨幣と鋳造金属貨幣を指す。信用貨幣とはある信用に基づいて商品交換の媒介物になる貨幣である。主に紙幣とデジタル貨幣を指す。
 鋳造金属貨幣は、価値通貨としての希少性、耐久性、分割性という利点があるが、金属自体の重さにより、遠距離で、大規模かつ安全な取引が難しいという弱点がある。信用貨幣としての紙幣は鋳造金属貨幣の問題を解決することに生まれた。世界で最初の紙幣は、紀元11世紀ごろ、中国の宋王朝の四川に登場した「交子」である。これは、商品交換で持ち運びにくい重い鉄銭の代替手段として生まれた。 16世紀にはイギリスでは金細工職人の金の貯蔵業務に端を発した。金を保管する際に発行される預り書が金匠券となり、この金匠券が流通することによって紙幣が生まれた。紙幣は、鋳造金属貨幣と一定比率で兌換できる信用にも基づいて流通する信用貨幣である。
 初めは、紙幣は鋳造金属貨幣の兌換券として貴金属貯蔵数量と一対一で発行されたが、貯蔵室に常に一定量の鋳造金属貨幣が存在することをみて、実際の鋳造金属貨幣貯蔵量を超える紙幣を発行して、越えた部分の紙幣を自分が取って、密かに鋳造金属貨幣と交換する権利を占有して、利益を獲得した。この実際の金属貯蔵量超えて発行された紙幣は実際に貴金属を預かった人と全く同じの兌換券である。これは金に廉価な銅、鉛などを混じて金を希釈して、価値を侵蝕する隠れた窃盗行為である。この行為はイギリスの訴訟で法的には認められていたが、自然法には反するものである。この行為は禁断の金のリンゴを噛んだように、貪欲な一歩を踏み出した。ここに、紙幣の秘密が隠されている。これは原初的な貨幣増発であり、経済史において、原初的な罪である。
 紙幣には印刷により貨幣を造る力がある。貨幣増発を一般的にインフレ-ションと呼ばれているが、実は貨幣発行組織が、利益を獲得する手段である。鋳造金属貨幣は、貴金属通常金の純度を希釈する明らかな法と道徳に違反する詐欺行為以外には貨幣を無から生み出すことができない。貨幣発行組織である中央銀行が紙幣を発行する行為と一般銀行が預金と貸し出す業務によって、信用の拡大は本質的に異なることである。一つは無から紙幣を増発行することによって、同じく貨幣を先に所有している価値を侵蝕する行為であり、もう一つは預金と貸しの循環のより信用を拡大することである。
 金本位制では、紙幣で金貨を固定レートで交換することができる。紙幣の発行量は金の貯蔵量を超えているが、紙幣で金を兌換する請求者が取り付け騒ぎを起こさない限り、兌換はできるようになっている。しかし、一旦戦争などの危機が発生し、物価が上がれば、人々は積極的に紙幣を金貨と兌換し、政府は元のレートで金と兌換することができなくなる。1971年に米ドルが金との固定連動を切り離された後、貨幣が増発され、インフレ-ションが引き起された。紙幣は時間と伴い元の価値を失い続けている。インフレ率が年間2%の場合、100年後には100ドルが13.26ドルに相当し、インフレ率が年間3%の場合、100年後には100ドルが4.75ドルに相当し、インフレ率が年間5%の場合、100年後には100ドルは0.59ドルに相当し、インフレ率が年間8%の場合、100年後には100ドルは0.024ドルに相当し、インフレ率が年間10%の場合、100年後には100米ドルは0.003ドルに相当する。価値を失う部分は、貨幣発行組織の利益である。ハイパーインフレーションの場合は、富を直接的に略奪することであり、その結果は政権の破産につながる。紙幣は、商品の価値尺度機能、交換機能、価値保存機能だけではなく、価値侵食機能も持っている。

 3.貨幣の基礎システム
 人々の視線は貨幣自体に引かれやすく、貨幣の背後に存在するシステムを発見するのは難しいことである。価値貨幣であろうと、信用貨幣であろうと、貨幣そのものは取引記録の一部である。携帯電話が通信システムの一部であるように、貨幣は取引記録システムの一部である。貨幣は商品取引の媒介物として、商品との取引が発生したときに決済されている。商品取引は即時決済取引と非即時決済取引がある。非即時決済取引は、商品と貨幣を同時に交換せず、取引記録を通じて取引することである。即時決済取引は、非即時決済取引の特別な形式の取引であり、決済完了された取引である。取引記録は貨幣の基礎システムである。メソポタミア文明で発見された最初の文字記録は商品取引の記録であった。
 紙幣は鋳造金属貨幣あるいは貴金属の預かり証から変化してきたものである。この預かり証は取引記録の一部である。この預かり証を持って、鋳造金属貨幣及び貴金属を受け取ることができる。当事者に認められた取引記録があれば、所有関係が明確になり、取引を行うことができる。中国の宋王朝に登場した紙幣の名称には、「交子」、「会子」、「関子」などがあるが、これらの名称には、「子」の文字があり、「子」には親から生まれた存在の意味がある。これは紙幣の後ろにもう一つ存在があることを暗示している。それは紙幣の基礎になる鋳造金属貨幣と紙幣発行組織だけが管理している金属貨幣と紙幣に関する元の取引記録である。貨幣は一種の手形として、持ち運ぶ可能な取引記録である。貨幣とこの元の取引記録が一つに成ったとき貨幣システムが形成される。

 4.公開取引記録
 太平洋のヤップ島の原住民達は、車輪の大きさの円型の石を貨幣として使った。そこでは取引による物の所有者の変更を公的に記録された。これは持ち運ぶことができない大きい石でできた貨幣である。今まで発見した貨幣の中で一番大きい貨幣だと言われている。現代人は貨幣の本当の姿を知らないかもしらない。ただ、光沢のある金、不思議な紙幣が貨幣だと思っている。この石は、まるで時間と空間を超えて現代社会にやって来て、ビットコインの取引を公開記録しているようだ。地球上の人々が、何百年、何千年もインターネットを通じて取引を記録できる巨大なシリコン石が形成された。これはオープンな分散式データベースである。このデータベースでは、コンピューターがインターネットで絶えなくビットコインの取引を記録している。
 銀行が誕生して以来、どの貨幣発行組織も自身の取引記録を公開したことはない。取引記録を公開すると、貨幣を増発し、貨幣を希釈し、貨幣を侵蝕することが明らかになる。この前例のない公開取引記録のデータプロジェクトは、人類の新しい貨幣の母体である。貨幣の母体は、貝殻、金、紙幣ではなく、取引記録である。あらゆる貨幣は、取引記録の上で、運営されている。 継続的に公開取引を記録するために、取引記録者にまたはマイニング者と呼ばれる者達を奨励するとして、ビットコインが誕生した。持続的に公開取引を記録することはビットコインの価値の基盤である。ビットコインが金のリンゴであれば、公開された取引記録は金のリンゴを育てる土壌である。

 5.約定貨幣
 ビットコインは公開取引記録に基づく約定貨幣である。ビットコインの本質価値は貨幣発行総量と過程を約定したことにある。
 貨幣は商品であると同時に、商品交換の媒介物として、商品の世界で特別な位置を占めている。貨幣発行組織が自身の利益にために低コストの紙幣を大量に発行し、それらを実物の商品と交換する場合、紙幣は商品取引の媒介物として機能するだけではなく、紙の価値で何千何万倍の実物商品と交換する機能も持っている。これによって、貨幣発行組織は紙幣を増発することで、富を獲得することができる。これを防ぐために、信用貨幣は価値保存機能を持たなければならない。貨幣が継続的に価値保存機能を失う場合、それは貨幣発行組織が計画的に一般貨幣所有者から貨幣価値を侵蝕していることである。貨幣発行組織が紙幣を金貴金属貯蔵量属よりも多く発行して利益を得る場合、紙幣は単なる商品取引の媒介機能だけではなく、価値侵蝕機能を持つことになる。
 商品の取引が市場を形成し、市場は取引の集合である。市場は自由人の等価交換によって動いている。市場は商品取引の効率を向上させるために、商品取引の媒介物である紙幣に特別な権力を与えた。それは等価交換を基盤とする市場において、紙幣には商品の価値より遥かに低い紙の価値で商品と交換できる特別な権力が付与された。だたし、信用に基づいたこの権力は商品取引の効率を上げる機能を果たすためのもので、自身の利益を得るために存在することではない。紙幣が市場から与えられた権力を乱用し、紙幣増発により、利益を獲得すると最終的には市場から排除され、紙幣の価値は元の紙の価値にもどる。これが人間社会で多く経験したハイパーインフレーションである。緩やかなインフレーションの原因も、貨幣発行組織が貨幣権力を乱用して利益を得た結果である。
 一旦人間の貪欲が紙幣を支配すると、あらゆる手段と機会を利用して、紙幣の価値侵蝕機能を強化することになる。金本位制は貪欲に対する制約である。1931年に貪欲はそれを破った。ブレトンウッズシステムのドルと金の固定比率制も貪欲に対する制約である。1971年に貪欲はそれを破った。35ドルで1オンスの金に交換できない場合、なぜ100ドル、あるいは350ドルで1オンスの金に交換しようとしないのか?いや、ドルが必要なのは金に制約されないことであり、 そして金を抑制して、貨幣の王座に君臨することである。紀元前7世紀、リディアで最初の金銀の硬貨が鋳造されてから、政権は貨幣発行権を支配しようとしてきた。一旦政権が貨幣発行権を独占すると、貨幣の価値は初めには保ち、後は価値が失われ、最後には崩壊する道を辿る。ただ金と銀は溶かされ、再生し政権の衰亡を超えて、本来の価値を維持することができる。貨幣の歴史は価値保存機能と価値侵蝕機能の戦いの歴史でもある。人々は働いて得た貨幣の価値を保存することを望んでいるが、貨幣発行組織は貨幣を増発し、貨幣価値を侵蝕して、利益を獲得しようとしている。最終的には政権と貨幣の崩壊で幕を閉じる。
 ビットコインは発行総量と発行プロセスが約定されている。この約定により、ビットコインは貨幣権力を制約し、価値侵蝕機能を断絶し、貨幣本来の商品取引の媒介物としての役割を忠実に果たすことができる。ビットコインはピアツーピアの非中心型のオープンな貨幣システムであり、貨幣を増発して、価値を侵蝕することはない。同時に、約定貨幣であるビットコインは、自然的に限られた資源となり、長期的には、先行者の利益に繋がる。ビットコインの需要の増加に伴い、貨幣の供給は貨幣単位の分割によって供給することになる。現在、最小単位はさとし(satoshi)である。
 貨幣発行組織が貨幣を増発して、利益を獲得することは長期的に見れば、彼らは破壊への道を辿ることになる。貨幣権力を乱用して、貨幣を増発することは、価値を創造することではなく、価値を破壊することである。それは甘美な毒物のように貨幣発行組織の機体へ浸透し、彼らの価値を創造する力を徐々に奪い、彼らを価値の盗人へ堕落させる。彼らは「汝、盗む勿れ」という古い戒律破ったことに、罰を受けなければならない。貨幣を発行することによって利益を獲得することは、盗みによって利益を獲得することである。社会は盗みとは何なのか?を判断できない場合、それは盗むそのものより有害である。それは貨幣の価値を侵蝕するだけではなく、人間の存在の基盤である誠実の基準を侵蝕することになる。そうなれば、人間社会は盗人の楽園になり、正義は光を失い、文明は衰退される。
 権力と貨幣は、人間社会にとって制御するのが難しい洪水と猛獣のような二つの存在である。人類は何千年の努力を通じて、一部の国では主権在民の民主主義体制が確立され、権力を制御することができたが、権力の背後に隠されている貨幣はまだ制御することはできていない。貨幣は誰でも馴染めているが、よく知らない存在である。人々は貨幣を望みながら、貨幣から離れている、人々は貨幣が好きであるが、貨幣を憎み、貨幣を崇拝しながら、貨幣を軽蔑している。貨幣は秘密に満ちており、人々が貨幣の本当の姿を知ることは難しいのである。貨幣の誕生、貨幣の発行、貨幣の流通、貨幣の帰属は隠れた形で運営されている。商品交換の媒介物としての紙幣は超低価である紙の価値で高価な商品と交換する特別な権力を持っている。この紙幣の特別の権力を制御できない場合、紙幣は必然的に商品を侵蝕し、価値を侵蝕し、最終的に自由市場を支配することになる。貨幣発行権力は、すべての権力の背後に隠された力である。それは幽霊のように権力の内外をさまよっている。それが行くところは無敵であり、どこへ行っても、すべてが静かに道を譲っている。国家が発行する貨幣は主権貨幣だと言われているが、実際は主権貨幣ではなく、特権貨幣である。主権貨幣は主権を持つ人々に利益をもたらものであり、貨幣発行組織関連の特権集団にしか利益を与えるものではない。人々が持っている貨幣が時間に伴い絶えず価値が失われているのに、どうやって主権貨幣だと言えるだろうか?人間が貨幣に対する制御は権力に対する制御より遥かに難しいことである。中央銀行が発行する貨幣は負債として、貸借対照表に載っているがこれは債権者がいない沈黙の負債である。実は負債には債権者はいる。その沈黙の債権者は他ならぬ誠実に働いて、価値を創造することにより貨幣を所有し、また、その貨幣の価値が失い続けている大多数の国民である。
 1971年、アメリカドルが金との固定レートから離れてから、ドルは金を基盤にする信用貨幣から、政権を基盤にする信用貨幣になった。これを法定貨幣あるいは象徴貨幣と言われている。ドルの信用基盤を金から国家権力に変わった。国家権力の信用に基づく信用貨幣を権力貨幣と定義する。権力貨幣の発行は貨幣政策を決定するごく一部の人達によって運営されている。貨幣政策は景気、雇用率、インフレーションなどの経済状況を考慮するが、権力貨幣の政策の本質的目的は継続的に貨幣の増発能力を拡大することにある。貨幣の増発能力が貨幣発行組織に利益をもたらすものである。貨幣の増発能力は増発規模、増発期間、増発空間と増発領域で計れるが,結局は貨幣の競争力で決定される。世界は貨幣の競争市場になっている。権力貨幣の競争力は経済力に由来するが、最終的には軍事力に頼らざるをえない。権力貨幣と軍事力は密接に関連しており、両者は相互に依存し、相互に共存している。貨幣は市場から生まれるが、紙幣が信用の基盤が国家権力になった場合、紙幣は市場を支配する力を持つことになる。権力貨幣は継続的に貨幣を増発することにより、紙幣の紙の価値で商品と交換する権力によって、等価交換の市場秩序を破壊して、利益を獲得する。権力貨幣は自由競争の市場を破壊するだけでなく、民主、平和、文明も破壊することができる。権力貨幣は貨幣権力の膨張した結果であり、また、貨幣権力を拡張する基礎でもある。権力貨幣は武力を基礎にしている貨幣であり、貨幣権力が極端に膨張した信用貨幣である。
 貨幣は価値尺度機能、交換機能、価値保存機能以外にも、価値侵蝕機能も持っている。価値侵蝕機能は、古代ローマの時代にも存在しているが、紙幣が主流になって,特に1971年アメリカドルが金との固定レートから切り離れてから、急速に拡大した貨幣の重要な悪の機能である。そして貨幣の侵蝕機能は経済学領域でまだ研究されていない。貨幣侵蝕機能とは貨幣発行組織が貨幣増発により大多数人の貨幣の価値保存機能を喪失させ、貨幣発行利益を得る機能である。一方の価値侵蝕はもう一方の価値喪失である。貨幣の価値侵蝕機能は、年2%のインフレ率で、社会に広く認められているが、2%のインフレ率は、2%の価値侵蝕率である。これは貨幣発行組織が、信用を破壊して獲得した利益であり、貨幣権力を乱用した結果である。これは金貨に安価な銅や铅等を混入させる行為とまったく同じく、貨幣発行組織による人の自由財産権を侵害する行為である。価値侵蝕機能は、癌細胞のように、自由市場の有機体を侵蝕する。貨幣の価値侵蝕機能を断絶することにより、公正な貨幣が生まれる。ビットコインは、公開取引記録に基づいて、総供給量と供給のプロセスを約定することにより、貨幣権力を制約し、紙幣の価値侵蝕機能を断絶して、貨幣を自由で公正な軌道に導いた。

 結び
 ビットコインはゴールドと同様に誠実な貨幣である。ビットコインはデジタル時代の基礎貨幣になる。ビットコインは信用貨幣として、金や銀などに信用の基盤を築かれたことではなく、公開された取引記録に信用の基盤が築かれている。ビットコインは、貨幣システムとインターネットシステムの交界で生成され、貨幣システムとインターネットシステムの進化の産物である。貨幣は微粒子を媒体としてデジタル情報へと進化し、インターネットはデジタル宇宙へと発展している。ビットコインはミクロとマクロの逆方向の進化の界点で、巨大なエネルギーを生み出し、デジタル文明の進展を一層推進している。貨幣は単なる商品交換の媒体に留まらず、社会資源のデジタル形態の存在である。人々は貨幣から離れることはできない。貨幣の問題は生存の問題であり、自由の問題であり、平和の問題であり、そして文明の問題でもある。貨幣は文明の産物でありながら、文明を推進する力を持っている。人間は、自由で公正な権力を必要とするのと同じように、自由で公正な貨幣を必要としている。ビットコインの未来は時間だけが分かるものである。いつの日か、貨幣の世界でビットコインの姿が消えてしまうかもしらないが、ビットコインが内在している約定精神は貨幣権力を制約し、貨幣を公正な方向へ導く。
 設計は思想を現実に変える。中本哲史が設計したビットコインは、イムホテプが設計したピラミッド、モンテスキューが設計した三権分立と同じように人間社会の発展に深い影響を与えることになる。欲望に満ちた貨幣の世界で、ビットコインを通して,我々は人の魂から来る希望の光が見られる。

                                            以上

                                                                                                   2022年7月10日
                              
                                                                                                                       李 東哲
     
 参考文献

 1.中本哲史  「ビットコイン:ピアツーピア電子キャッシュシステム」。
 2.フリードリヒ・ハイエク  「貨幣発行自由化論」。

 修正履歴
 2023年11月19日日本語翻訳修正
 2024年1月19日
 2024年1月21日

 
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